24ビット96キロヘルツの意味
RHODES Premierの音源シリーズの多くは、24bit/96kHzで収録されています。何故、多くのプロのエンジニアは24bit/96kHzにこだわるのか、そもそも24bit/96kHzとはどんな意味を持つのか、考えてみたいと思います。
よく、サンプリング周波数が語られる時、大抵はCDの上限周波数が何キロヘルツだから、人間の可聴範囲をこえているとか、いないとか、という話になりますよね。
CDの44.1kHzで理論的に十分なはずなので、例えば96kHzは、
高域がより伸びる
↓
そんな高音はどうせ人間には聴こえない
↓
関係のない音だから96kHzなんて必要無い
と考えるのは、ごく自然の流れと思います。
しかし実際には、エンジニアやクリエーターの中は96kHzでしか録音しない、というこだわりの方々がたくさんいるのです。現在のデジタルオーディオ業界でも、DAWソフトやオーディオインターフェイスなども、ことごとく96kHzに対応済みです。
それは一体何故でしょうか。彼らは何を求めているのでしょう。単なる「おまじない」のようなこだわりに過ぎないのでしょうか?
もちろん答えは「No」です。96kHzは、ワイドレンジの高域が欲しいためのチョイスでは無い、という事を、ご説明したいと思います。
44.1キロヘルツの理想と現実
16ビット44.1キロヘルツ、つまり、CDクオリティは本来、音の情報としては十分なはずで、実際、理想的に構築されたシステムで鳴らすCDは、それは素晴らしいサウンドを楽しむ事が出来ます。
「理想的に構築された」と書いたのは、そうでない一般的なシステムでは、16bit/44.1kHzの本当の実力を余す所なく発揮する事が、意外と難しいからです。
デジタルオーディオデータがADコンバーターを通りオーディオインターフェイスからコンピューターまでUSBやFirewireケーブル、あるいはPCIなどのスロットをくぐり抜け、マザーボード経由でハードディスクに書き込まれる過程で、本来のサウンドが様々な要因で劣化していきます。
例えば、ルビジウムなどの良質なクロックを与えるだけで、解像度、位相などが目に見えて改善したりします。Firewireケーブルを4mから50cmのものに変えるだけで、先ほどより明らかに音に芯が出てきたりします。電源ケーブル一本でコロコロ音が変わりますし、他にもオーディオ用ドライブをSSDにする、メモリを増設するなど、その他様々な細かい事で、音はどんどん良くなっていきます。信じがたいと思われる方も多いとは思いますが、それは実際に試して頂ければ、本当に音が変わる事はどなたもすぐに確かめる事が出来ます。
元のオリジナルソースより音は良くなったりしませんので、つまりこれは、最初に聞いていた音は実は劣化していたもので、その事に我々が気がつかなかっただけで、手を入れるあげる事で劣化していた音がオリジナルに近づいていくという意味の、音質改善と言えます。
再生、録音ならまだしも、純粋なファイルコピーですら、ことデジタルオーディオに限っては「デジタルデータは不変である」という主張と「バイナリ一致イコール同じ音では無い」という主張が対立する論争が各所で始まって久しいです。
Plextorブランドで知られたそのドライブの製造メーカであるシナノケンシ社も、デジタルオーディオのデリケートさを、原子間力顕微鏡写真などを用いて専門家が詳しく解説してたりします。データが書き込まれるディスク上のデータ痕の、立ち上がりや立ち下がりの変化で音が変わってしまう事があり得るとかあり得ないとか、もはや訳の分からない分野にまで話が及んでしまいます。
そこは専門家に結論を任せて、我々音楽家は、結果の音で判断するという姿勢でよいと思います。
マスタリングと96kHzの関係
我々が考えなくてはならない事は、最終的なCDクオリティを可能な限り上げる事です。
96kHzのセッションで録音しても、44.1kHzのセッションで録音しても、最終的には世の中に聴いてもらうために、通常は44.1kHzのCDクオリティに落とす事になります。
その44.1kHzに落とす作業が、現代のマスタリングの主たる仕事です。この時に行われるのは、オリジナルのデジタルオーディオを再生し、マスターレコーダーに録音する作業です。
どうせ44.1に落とすなら最初から44.1kHzで録れば十分と、やはり考えたくなるものです。
しかし実際に96kHzの録音と44.1kHzの録音を聴き比べると、その差は歴然とします。実際に音で聴いて、その違いに驚いた体験を持つ方は、この問題に真剣に取り組まざるを得なくなるわけです。
何故、96kHzのオリジナルソースの方が結果が素晴らしいのか、これは音が先で、後付けで考察しているに過ぎませんが、私は次のように考えています。
オリジナルのデータが96kHzの分解能であった場合、仮に30%分のデータが劣化し(欠損?あるいはゆがんで、濁ってしまったとしても)67.2kHzと同等のクオリティを維持していると言え、44.1kHzで最終的にマスターを作っても十分なクオリティを維持出来るという事なのではないか、というものです。
オリジナルのデータが44.1kHzだった場合、同じシステムで同じだけ、30%劣化すると30.87kHzと同等となり、明らかな聴感上の劣化が生じるわけです。
試行錯誤を繰り返す中で、44.1kHzはどこまでやってもまだ先がある、どんどん音が良くなっていく、という事を一部始終体験しています。今後もさらに上があるに違いありません。30%という数値は単なるイメージですが、あながち大げさな数字ではないのかなという実感が個人的にはあります。
44.1kHzの本来の実力は、計り知れないレベルのものです。しかし我々が普段使ってるDAWシステムでは、それを発揮するにはとてもマニアックな努力を延々と要します。上を求めるほど投資額もキリが無くなっていきます。96kHzで録っておく方が断然簡単なのです。それは音源も全く同様です。
96キロヘルツの驚異的な実体験
もうずいぶん前の事になりますが、96kの実力を見せつけられた実験がありました。
ある先鋭チームが当時まだ目新しかった96kで録音し、44.1kマスターを作成したものと、私が最初から44.1kで同じアーティストを同じ楽器で録音したものを比較したテストです。
当時、自分なりにすでにプロとして録音ノウハウには自信もあり、音質の追求に夢中になっている時期でもありました。テストでは先に自分の録音を鳴らして、なかなか満足の行くものだったのですが、そのチームの音を鳴らした瞬間、ショックを隠せませんでした。
どちらもリミッターなどエフェクタの類いは一切入れていない、シンプルな録音なのですが、アンプのレベルを上げたかと思うような、音圧と言いますか、音のエネルギーを感じたのです。私の作成したマスターとは明白な差がありました。テーブルや椅子などの障害物を突き抜けてくるような、生き生きとしたエネルギーです。それに比べて自分の録音は、なんともか細い、ひ弱な音に感じました。
同じ44.1kHz同士の比較で、です。 高域の可聴範囲の問題などではありませんでした。まさに大敗北を喫したのです。
この差はどこで生まれているのか。その時は分からず、様々に試行錯誤しました。最終的に96kHzで録る事で、同等のエネルギー感を得られた時に、これだったのか!と思い知らされたわけです。他にも改善すべき事はありましたが、決定的だった答えは、96kHzだったのです。
その経験以来、自分のエンジニアの仕事としての録音で96kHz(88.2kHz)以下でセッションを開始した事は一度もありません。
よく88.2kHzが良いという話題もあります。これは最終的に44.1kHzにコンバートする上で、割り切れる方が良いという考え方で、アナログマスタリングではなく、最終形をデジタルコンバートで作成する前提での考え方となります。
192kHzなども現代は利用可能ですが、多くのトップエンジニア達は、96kHz以上は無意味、と結論付けています。世界のマスタリングスタジオで常用されるAD/DAコンバータブランドLavry社も、96kHz以上は不要というスタンスをとっています。
私は192kHzと96kHzをきちんと比較実験した事はありませんが、音源の収録データサイズとして現実的な96kHzを選択しています。
この文章を書いたのは、あるお客様からご感想を頂いたのがきっかけです。24ビット96キロヘルツのドラムやピアノの音源を探しても、ほとんど世に出回っていなくて困っていたそうです。恐らく同じような体験をされたのでしょう。
24ビット96キロヘルツの音源の必要性を一番感じているのは作者である私自身ですし、同じ思いでご愛用頂いているお客様がいる事もとても嬉しく思っています。
特にドラムなど楽曲の基礎となる楽器は、生々しさだけでなく音圧競争にも直結する話になってきます。
考えられるあらゆる条件に理想を求め、音質を追い込んだ音源制作は途方もない作業ですが、自分の為、そして皆様の音楽クオリティ向上の為と信じ制作しています。 24ビット96キロヘルツのRHODES Premier音源が、お役に立てれば幸いです。
Sample CD


Mark1 Stage Premier 96k


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